六代目棟梁としての責任。日本人としての想い。

はすみ工務店の創業は明治。これまで日本の伝統建築を継承し続け、私の代で六代目になります。
ただ最近では、私たちのような伝統建築の担い手は非常に少なくなりました。

「寡黙だけど、ものづくりにかける想いは本気です。」

家というのは単なる箱ではありません。家族が和気あいあいと過ごし、その空間を通して心豊かな生活を送る。人の成長と同じように、家も時の経過と共に成長し、私たちに様々な表情を見せてくれます。そんな風に「家と共に歳をとる」ことができたら、とても素敵なことだと心から思います。

移り行く時代の中、ひた向きに伝統をつむいできた、はすみ工務店の六代目としての責任。そして先人たちが築き、脈々と受け継がれきた文化や歴史を、私は一人の日本人として、決して絶えさせるわけにはいかないのです。

「伝統をつむぐ家づくりで豊かな暮らしを届けたい。」
これが、私が大工として生きる原動力であり、”ものづくり”に込めた願いそのものです。

関東平野の美しい田園風景が広がる、埼玉県菖蒲町(現:久喜市)。その地で生まれ育った私は、昔から”ものづくり”が大好きでした。やはり一番の影響は、大工だった祖父の存在。幼い頃から木材が身近にあったり、建築現場を訪れる機会も多かったため、物心がつく頃には、”ものづくり”への関心が高く、自分の手で何かをつくることが楽しくてなりませんでした。きっとその頃の体験が、今に深く通じているのだと思います。

「本当に好きだから、楽しいんです。」

建築の勉強に励んでいた大学生の頃、業界の実態を知るにつれ、多くの矛盾と疑問がわき上がってきました。

「なぜ、日本の住宅の寿命は短いのか。使われている材料の質が低下しているのではないか。なぜ、外国産の木材は溢れているのに国産材はほとんど使われていないのか。なぜ、職人は生き生きと仕事ができなくなってしまったのか。」

建主さんにとって家とは、生活の基盤となる場所で、金額も大きく、それだけ思い入れも強いものだと思います。だからこそ、家づくりの在り方を考え、職人が生き生きとしながら、もっと良い家づくりをする方法があるはず。

「人の心を忘れたら、いい家づくりはできません。」

もっと広い世界をこの目で見たい。肌で感じたい。

そこで一つ行き着いたのが、職人の丁寧な手仕事、材料への徹底したこだわり、そして設計段階から建主さんと深く関わることで、人の心を感じられる家づくりをするということでした。

ちょうど大学のインターンシップの時期だったため、すぐさまそんな家づくりを経験できる工務店がないかを探し、ある日本の伝統的な家づくりをしている工務店に至りました。

そこで実際に伝統的な技術や職人、本物の素材に触れ、木を扱うことの面白さや先人の知恵の奥深さ、職人や建主さんとの深いつながりなど、仕事をしながら日本建築の魅力を体感することができたのです。「自分もこの道を進んで行こう。」そう、心に決めた瞬間でした。

ものづくりで本当に大切なことは、いつの時代も”人の心”だと思います。機械化や合理化などが進む現代だからこそ、人の心を感じられる、温もりある家づくりを私は目指しています。

「日本人だから、日本の材料で、日本の伝統技術で、日本の家をつくりたい。」日本人が古くから持つ、自然との調和、人との調和を大切にする和の精神は、本当に素晴らしく、日本人が世界に向けて誇れるものです。また、その中で育まれてきた日本の建築は独自の発展を遂げ、奥深く、とても魅力があります。私も日本人として、和の精神と和の建築を大切にしていきたいです。
自然の材料と、それを活かす知恵と技能で家づくりをすることには、とても深い意味があると信じています。